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序幕 とつぜんの別離
周の前に立つ少女はうつむいて、困ったように表情を曇らせている。困惑した彼女の表情は無邪気さを彷彿させる稚い部分が残りつつも、ほのかに艶っぽさが垣間見えている。その色っぽい空気は、ほんの数日前まで彼女が知ることもなかった、大人びた女性らしさとも表現できた。
黄金色がかった栗色の髪に、とろみを帯びた青黒い瞳。母方の祖母が西欧の人間だからだという話をどこかで聞いたが、いまさら彼女の出自自体に興味はない。
周にとって大事なのは、彼女のような希少なうつくしい少女はこの小さな島国では滅多にお目にかかれないというところと、それゆえに自分が彼女を護らなくてはならないというところにあった。
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