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そのため、人手の少ない日中はアマネと撫子が翡翠のために歌や躍りの稽古を行ったり、脚本の読み合わせを行ったりしている。
もともと身軽な翡翠にとって、身体を動かすこと自体は楽しく、苦ではない。そのため、はじめのうちは和やかに進む練習だが、躍りが終わり、歌の稽古となると空気が一変する。
翡翠の音痴は巷の流行歌であるカチューシャの唄ですらお経に変えてしまうほどなのだ。
「呆れるわね、親父さまの審美眼は認めるけれど、歌姫は歌が歌えてこその歌姫なのよ! 練習だって頑張っているのになんでそこまで音程がずれるのかしら?」
「うっ……だから言ったじゃないですか、わたし、音痴ですって!」
「自慢するほどのことじゃないでしょうに。だいいち誇れません! アマネちゃんが認めているからってその音痴はなくってよ! 彼女の隣に立つからにはこの撫子、貴女の音痴を徹底的に克服させてやりますわ!」
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