第弐幕 黒糖飴と歌姫修行

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 撫子が悲鳴を上げる翡翠を連れて部屋から去るのを見て、アマネはホッと胸をなでおろす。  その横で、静鶴はクスクス笑っている。 「かわせみって、姿は美しいのに、鳴き声が聴くに堪えないほど残念なのよね……ほんとあの()みたい」 「どういうつもり?」 「あら怖い。私は事実を述べただけよ」 「翡翠の前で話すようなことじゃない」 「いいじゃない、どうせすぐ耳に入るんだから。彼女の元婚約者の尾上男爵家の皓介さまが別の公家華族から新たな花嫁を娶る噂はすでに拡がっているわ」 「それで、王子さまが王女さまと結婚することを報せて、更に悲劇のヒロインに磨きをかけさせるのが貴女の狙い?」  だとすればタチが悪い。アマネはふだんから舞台のことしか見ない静鶴に危うさを感じていたが、お腹に誠の子どもを宿してからはその傾向が更に強まっているように見える。 「まるで人魚姫みたいでしょう?」  アンデルセンの童話を引き合いにして、静鶴は悪戯っぽく笑いかける。童女のようにあどけない彼女の笑顔に、騙されるものかとアマネはフンと鼻で嗤う。 「彼女は泡になって消えたりしないよ」 「ずいぶんとかわせみの肩を持つのね」
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