第弐幕 黒糖飴と歌姫修行

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「……そんなこと」  誠とともにあの場にいた静鶴は勘づいているのだろう、翡翠が歌姫として活躍しようがしなかろうが、結婚が避けられない現実に。 「あら、かわせみを鳥籠から出してあげたいなんて言いながら歌唱指導に熱をあげているのはどこのどなた? 矛盾してるわよ」 「余計なことを言って翡翠を混乱させるのはやめてください、義母(はは)上」  うんざりした表情でアマネが言い放つと、静鶴はぺろりと舌を出して言い返す。 「……私のこと舞台しか見てないって小鳥ちゃんは言うけど、歌と躍りを愛するあなたの方が重症だと思うわ」  翡翠に真剣に歌を教えるアマネを見ているからだろう、静鶴は自分が不利になることを構わず翡翠を熱心に指導する歌姫の姿に危惧を抱いている。誠に縁を持ち、舞台に情熱を注ぐ同じ穴の貉だから、静鶴はアマネを手放せず、アマネもまた、彼女を義母と認めているだけだというのに。 「でも、舞台があるから命拾いしているのはお互いさまです」  アマネの言葉に、静鶴も渋々頷く。 「そうね。金糸雀歌劇団を潰さないためにも」
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