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「台本はすでに出来上がっているの。あとは決行の日取りと役者を揃えるだけ。だから……彼を貸してくれない?」
訝しげな表情のアマネに、静鶴は駄目押しのひとことを囁く。
「あなたにだって悪い話ではないはずよ。その身に宿る誇り高い血を日の本の公家華族に穢されるなんて耐えられない。そうは思わない? 金城朝周……いえ、周ちゃん」
小鳥遊アマネこと金城朝周はふっと顔色を変え、静鶴に告げる。
「――靭に、伝えておきます」
が、と声色を低くして、彼は囁く。
「翡翠を侮辱するような言葉だけは、口にしないでいただきたい」
もはや王国など存在しない。そう伝えても静鶴には通用しない。
琉球王国再建を夢見る彼女にとって、王家の血を継ぎながら尚王家から距離を置いている誠は格好の旗印であり憧憬の的だ。下手に刺激をすれば日本の配下を受け入れた尚一族を巻き込みかねない。
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