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明治末期の琉球処分を経て華族の地位を賜り侯爵として東京へ移り住んだ王族。一方、按司だった誠の父親は横濱で生を終え、彼もまた横濱で士族として新たに生きていこうと商売を起こし、成功を収めた。だがそんな誠に取り入り後妻の座におさまった女は、王国滅亡に最後まで反対していた本土の残党の一派で、彼の王の血脈に目をつけていた……そして思惑通り子を宿し、彼女はいま、前妻が遺した息子をどうやって葬り去ろうか画策している。
とはいえ、誠がピンピンしているうちは動かないだろう。それに、尚本家にも多くの子が健在している。しばらくは静鶴も趣味の舞台を楽しむ傍ら、どれだけ子を多く残すかに時間をかけるはずだ。
それには金糸雀歌劇団という隠れ蓑が欠かせない。
静鶴と朝周は互いを牽制しあいながら、最高の舞台を演出しあっている。そこでしか、ふたりは共演できない。
歪んだ義理の母子関係を、誠は面白がっている。王様になる気はないなぁと笑って静鶴にあとのことは好きにしていいとまで言っている。だから彼女は諦めず、自分が次の王を産むのだと叶わぬ夢を夢見ている。邪魔な前妻の息子のことを憎みながら。
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