第弐幕 黒糖飴と歌姫修行

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 だというのに、自分が公家華族の令嬢と結婚するのは認めないという。懇意の公家華族と血縁を結ぶことの方が誠にとって利益となるのに、誇り高き血統を穢す行為だと静鶴は拒絶し、黙って縁談を壊したこともある。  きっと今回も、静鶴はなんらかの手をつかって翡翠を鳥籠から追い出すのだろう。そうすれば、また、代わり映えのしない舞台に情熱を傾けられる穏やかな日々がつづく。  だが、朝周の脳裡で警鐘が鳴り響く。  ――追い出された翡翠はどうなる?  溺愛していた父親にお金の代わりに外に出され、鳥籠に囚われた可憐で音痴なかわせみ。働いてお金を返して堂々と籠から出るため必死になって稽古に励む健気なかわせみ。  朝周にとって翡翠は、自分を舞台から退場させるための歌姫候補でありながら、結婚を現実のものへ導く花嫁候補なのだ。 「侮辱? あなたにとって厄介な娘でしかないのに、よくもまぁそんな偽善が言えるわね」 「……たしかに、狸ジジイが厄介な娘を連れてきた、とは思った、けど」
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