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【 第10話: でらうみゃ~? 】
俺は、焦っていた。
今、俺がおかれている状況が、全く飲み込めていなかったのだ。
「お、俺は……、こいつのフィアンセじゃないぜ……」
「はっはっはっ、名古屋国の王子は、やはり噂通り、面白い人じゃな」
「へっ? 面白い……?」
「わしの名前は、『ダガヤ』。この国の王を務めておる。『タロー王子』は、わしの娘『ミャー』に最大級のプロポーズをしてくれたそうじゃないか」
「はぁ? 最大級のプロポーズ……? な、何のこと……です……?」
「はっはっはっ、やっぱり面白い人じゃ『タロー王子』は。娘に
『De Lau Myar』
と求婚してくれたそうじゃないか」
「へっ? 『で、らう、みゃ~』……???」
「ああ、わがニヤ国に代々伝わる、求婚する際に使う最大級のプロポーズの言葉じゃよ」
「最大級のプロポーズって……、ま、まさか……」
「ああ、ニヤ国の古い言葉で『De Lau Myar』、つまり、『ミャー、君を愛す』という意味じゃよ。そう言ってくれたそうじゃないか」
「『ミャー、君を愛す』……? は、は、はぁーーーーーーーっ!?」
俺は、この『とんちんかん』なことを言う白髭オヤジに呆れていた……。
俺は、ただ単にきしめんを食べて、『でらうみゃ~(すごくおいしい)』と名古屋弁で言っただけなのに……。
何故それが、プロポーズの言葉にすり代わっているのか……。
「しかも、タロー王子が命の次に大切にしていた『クレジットカード』とかいうものを、ミャーにプレゼントしてくれたそうじゃないか」
「へっ? クレジットカードは、プレゼントしてないし……」
「はっはっはっ、タロー王子も冗談が好きなようじゃな」
「お父様、私このタローからもらったクレジットカード、一生大事にするにゃ♪」
ミャーは、そう言うと、俺のクレジットカードを胸に押し当てて、恥ずかしそうにモジモジしている……。
これは、いかん……。
このままでは、俺の大事な大事なクレジットカードがこの小娘に取られてしまう……。
「そ、それは、俺の大事なクレジットカードだから、返してくれ……」
「ばかもーーーーんっ!! 男たる者、一度、女にプレゼントした物は、取り返してはならぬ!!」
「(な、何だ……? またこの『掟』風な言い方は……?)」
「冗談じゃよな? タロー王子よ」
「あ、ああ……、はい。そう、冗談です……」
俺はとりえず、このイカれた国の『ダガヤ王』にこの場は従うしかなかった……。
でも、『ダガヤ』ってどこかで聞き覚えのあるような言葉だが……。
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