【 第25話: 婚礼の儀 】

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【 第25話: 婚礼の儀 】

『コンコン……』 「どうぞにゃ」 『ガチャ、キィ~ッ』 「タロー様、ミャー様、婚礼のご用意が整いましたので、まずはお着替えの方を」 「グリフ、ありがとにゃ」  俺は、薄れ行く意識の中で、ベッドにうつ伏せになり、虚ろな目で口を半開きにしながら、二人の会話を聞いていた……。 『パンパカパパパパパーーーーンッ!♪』 「それでは、只今より、タロー王子とミャー姫の婚礼の儀を執り行う」  付き添いのグリフが俺たちに、小声でこう(ささや)いた。 「タロー様、ミャー様、それでは、二人揃って、ダガヤ様の元へお願いします」 「あ、ああ、分かった……」  俺は緊張していた。  いきなり、朝から無理矢理、白の婚礼服に着替えさせられ、何やら大きな礼拝堂のようなところに連れて行かれ、扉が開いたと思ったら、急に『婚礼の儀』とやらが始まってしまったのだ。  会場には、王族と思われる高そうな礼服を着た人たちが、俺とミャーの行方をジッと見つめていた。  真ん中に赤い絨毯(じゅうたん)が敷かれ、その両サイドにベンチ風の椅子がある、いわゆる教会スタイルの結婚式のようだ。  正面には、パイプオルガンがあり、そこからは、聞いたこともない(おごそ)かで壮大なメロディが奏でられていた。  そして、正面奥に『ダガヤ王』が、真剣な面持ちで俺たちを待っている。  ふと、我に返り、横を見ると、純白のウエディングドレスを着たミャーがいつの間にか立っていた。  やばい、実にかわいい……。  胸元がはっきり分かる肩を出した、ボリュームのある純白のドレス。  手には、純白の透けたグローブに、オフホワイトのブーケを持ち、頭には美しくキラキラ輝く高級そうなティアラと、白く透けて見えるベールが、ミャーの魅力を一段と輝かせていた。  胸元に輝く無数のダイヤモンドらしきネックレスと、昨日外さないと言っていた不思議に輝く『紫色の鈴』。  何故か、猫耳にもかわいらしいキラキラ光るイヤリングが付いている。  そして、後方に続いている、無駄に長い長いウエディングドレスの裾。  どこまで続いているのだろう……。後ろの召使いたちも大変だ。  しっぽはドレスから出ているのか?  あった、しっぽはUの字に立っている。  ミャーも緊張しているようだ。  しかし、かわいい……。  本当に、こんな幼い子猫ちゃんと結婚しちゃってもいいんだろうか……。  そんなことを考えながら、俺たちはダガヤ王の元へと歩いていった。
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