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【 第30話: 栄養が欲しい…… 】
『スポンッ!』
「ワァーーーーーーッ!! おめでとうございます! タロー様、ミャー様! ワァーーーーーーッ!!」
民衆は、興奮していた……。
代わりに俺は、血の気が引いていた……。
血、吸わない約束だったのに……。何で……?
すると、ミャーが口元の俺の血を拭い取ると、申し訳なさそうに、上目遣いで一言俺にこう言った。
「ごめんにゃ、タロー……。我慢できなかったにゃ……」
「(いや……、そこは、お前、我慢しろ……)」
俺は、そう心の中でツッコミを入れた……。
しかし、貧血で俺の足元はフラついていた……。
多分、顔色も相当悪かったと思う……。
虚ろな目で、民衆を見ると……、
「ワァーーーーーーッ!! お似合いです! タロー様、ミャー様! ワァーーーーーーッ!!」
俺の体調とは真逆に、大興奮しているようだった……。
「はは……、はは……、はははは……」
俺は、引きつった顔で笑うしかなかった……。
こうして、俺たちの民衆への結婚の報告は、無事?……終わった……。
――3階のバルコニーから部屋へ戻ると、ダガヤ王が俺たちに労いの言葉をかけてくれた。
「タロー王子、ミャー、お主たちご苦労じゃった。皆もとても歓迎し、喜んでくれた。このニヤ国もこれで安泰じゃ」
「あ、ありがとうございます……。お父様……」
俺は、まだ正常な思考には戻っていなかった。
血を朝から何度も、ミャーに吸われ続けたためだ……。
早く何か栄養を補給したい……。
そこに、グリフがタイミングよく、飲み物を持って来てくれた。
「タロー様、お疲れ様でした。こちらの栄養ドリンクをお飲み下さい」
「(げっ!)」
あの色をしている……。
鉄臭い匂いもする……。これは、間違いなく『アレ』に違いない……。
「タロー様、如何なされましたか? 温かい方がよろしかったですか? では、すぐに……」
「い、いや、グリフ! いい……、これでいいから……」
多分、グリフは、また『ちんちこちん』の熱い血液ジュースを持ってくるに違いない……。
あの二の舞になるのは、もうゴメンだ……。
俺は、とにかく、今は何でもいいから、栄養を取らなければならない。
そうしなければ、俺は、間違いなく倒れるだろう……。
俺は、覚悟を決めて、この赤い液体を喉に流し込んだ。
『ゴクリ、ゴクリ……』
「ぷはぁ~。(やはり、アレだった……。うまくもない……)」
ふと、俺はミャーが気になり、ミャーの方を見る。
ミャーは、さっき俺の血を吸ったくせに、まだゴクゴクと、大きなグラスに入っている『アレ』を、腰に手をあてながら、平気で飲んでいた……。
見かけは幼いが、こいつは、かなりの大物だ……。
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