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【 第31話: 震えるバンビちゃん 】
その日の晩餐も、非常に豪華なものだった。
王族方が、昨日同様ズラッとテーブルに並び、豪華な洋服に、何やら見たこともないやたら毛の付いている変わった帽子を被って、グロテスクな料理に舌鼓を打っている。
俺とミャーは、昨日と同じ一番前の席で、皆によく見える位置に座らされていた。
ミャーの左隣りには、ダガヤ王が座っている。
でも、俺の右隣りには、誰も座っておらず空席だった。
昨日もそうだが、ちょっとそのことは、気にはなっていた。
今日も、ドラキュラみたいなこいつらには、豪華と言える料理が運ばれてくる。
今日は、何だろう。
「タロー様、今日のお飲み物は、どうされますか?」
俺は、小さな声でグリフにこう言う。
「あっ、グリフ……。俺さ、トマトジュースにしてもらえる?」
「トマトジュースですか……? そんな草食動物が飲むような、青臭い汁でよろしいんですか……?」
「ああ、いいんだ。どうせ、俺は草食系の男子だから……。頼む、ダガヤ王たちに気付かれないように、赤い飲み物にしたいんだ」
「畏まりました、タロー様。では、すぐにお持ち致します」
「悪いな、グリフ」
すると、すぐにトマトジュースは到着した。
「(これは、本当にトマトジュースなのか……?)」
俺は、匂いを嗅いでみる。
うん、『アレ』ではない。確かにトマトジュースだ。
俺は、安心してそのトマトジュースを飲む。
『ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ……』
「(う~ん、久しぶりにまともなものを飲む。やっぱり、人間で良かった)」
俺は、何か左横から視線を感じた。
すると、ミャーが俺の方を見て、目がトロンとしている……。
何だ……。俺が、何かしたというのか……?
「タロー、素敵にゃ♪ そんなにゴクゴク野生的に血を飲めるようになったにゃ♪」
まずい……。
こいつは、完全に勘違いしている……。
そのかわいらしいトロンとした目はやめてくれ……。
そして、半開きの口から出ているそのかわいい八重歯も、口の中に仕舞っておいてくれ……。
俺は、そんなお前たちのような吸血猫ちゃんに、期待されるほどの野生的な男ではない……。
むしろ、超草食の震える『小鹿のバンビちゃん』なんだ……。
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