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【 第37話: やあやあ我こそは! 】
城の中央塔のベランダに出てみると、遠くの方から馬に乗った20人ほどの騎士らしきやつらがこっちに向かっているのが見えた。
攻めてくるにしては、人数が少な過ぎる。
これでは、『ヤーシブ国』の騎士と言えども、我『ニヤ国』の部隊にはとても勝てないだろう。
俺は、それが不思議でならなかった。
「グリフ、ヤーシブ族のやつら、攻めて来るっていっても、ちょっと人数少なくないか?」
「はい。これは、何か別の目的があるのではないかと存じます」
「そうだよな……」
ヤーシブ国のやつらは、俺たちの城の門の前まで来ると、真ん中から白馬に乗った一段とかっこいいイケメン騎士が現れ、大声で俺達にこう言ったんだ。
「やあやあ我こそは、ヤーシブ国の王子、『エイト公』なり! ミャー姫の婚礼を中止させるため、ここに参った!」
そのイケメン騎士らしきやつは、何やら昔の日本の武士みたいな言い方で、ヤーシブ国の王子だと言った。
ヤーシブ国の『エイト公』……。
これは、もしや……。
どうせ、こいつらのことだ。
渋谷にある忠犬『ハチ公』像からきている名前だろう……。
だとしたら、実にふざけた名前だ……。
しかも、ミャーの婚礼を中止するだと……。
何を今更……。もう昨日、速攻終わっちゃってるし……。
来るのおせーよ!
「名古屋国のタロー王子とやらは、ここにおるか!」
何か俺のことを、こいつ叫んじゃってるし……。
超ヤバイじゃん……。
「タロー様、エイト公が呼んでおります」
「ああ、分かってるグリフ……」
俺は、気持ちを落ち着けるため、深く息を吸い込むと、大きな声でかっこよくこう言った。
「俺がタロー王子だ! 一足遅かったようだな! エイト公よ!」
うん、我ながらかっこよく決まった。
これで、やつも引き下がってくれるだろう……。
「ふふふ、名古屋国の王子ということで、どんなやつかと思っていたが、何かくたびれた風のおっさんじゃないか!」
「(な、なぬ~っ!? く、くたびれた風のおっさんだと~っ!? 俺が一番それ気にしとるんだがや~っ!!)」
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