【 第38話: エイト公という男 】

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【 第38話: エイト公という男 】

 城の門の前にいるヤーシブ国の王子『エイト公』と、城の中央塔のベランダにいる俺との攻防戦は続いていた。  確かに、俺とは違い、白馬に乗ったエイト公は、若くてスラッとした長身のイケメンだ。  歳は20代前半か。髪はグレー。肌も男にしては色白で、顔はどこか中性的な感じがする。  綺麗に輝く銀色の(よろい)(まと)い、腰には長い剣が見える。 「もういい! ミャー姫を出してくれないか! ミャー姫! ミャー姫はおるか!」  ミャーは、部屋からベランダへ出ると、俺の隣に来てこう叫んだ。 「私はここだにゃ!」 「おお~、ミャー姫! お久しぶりでございます! いつもお美しい!」 「何だにゃ、エイト公!」 「ミャー姫! 私も、そなたにプロポーズへ参った! そんな中年のくたびれたオヤジではなく、若くて強い私を選んではくれないか!」  エイト公は、俺を扱き下ろし、何とミャーにプロポーズをしに来たと言いやがった。  すると、ミャーはエイト公に向かってこう叫んだ。 「私は、タローともう結婚をしたにゃ!」 「ミャー姫! そんな人間世界の名古屋国の王子と結婚しても、何もいいことはないですぞ!」 「何ーーっ!!」 「ミャー姫! 私と結婚すれば、地下帝国最大の『ヤーシブ国』と『ニヤ国』が手を組むことになる! そうすれば、あの西にある『ヤキターコ国』に十分勝てる勢力となるのですぞ! だから、私と結婚をして欲しい!」  西にある『』……?  また、どこかで聞いたことがある言葉だ……。  ひょっとすると、大阪の『たこやき』のことか……?  これ、大阪の人が聞いたら、絶対ツッコまれるやつだぞ。 「何言っとるだぁーっ! ミャーは俺と結婚したんだがや! おみゃーさんになんか、渡しゃーせんがや!(訳:何を言ってるんだ! ミャーは俺と結婚したんだ! お前になんか渡さないぞ!)」 「タ、タロー……、ありがとにゃ……」  ミャーは、胸の前で手を丸めて、目を潤ませていた。  しばらくすると、ダガヤ王が突然ベランダへ現れて、エイト公に向かってこう叫んだ。 「分かった、エイト公よ! 城の中へ入るがよい! 一度、話し合おうぞ! 皆の者! 城の扉を開けーーい!」 「(ハハーーッ!!)」 『ギギギギギギ……、バタンッ!!』
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