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【 第44話: 全員を守るための秘策 】
俺は、城から窓の外を見つめ、このニヤ国へ来た時のことを思い出していた……。
その時、俺は閃いたんだ。
「んっ?」
この国を守るための方法、そして、同時にヤーシブの兵たちの命をも守る方法……。
ニヤ国、ヤーシブ国、両国全ての人の命を守るための『秘策』を……。
「グリフ! 皆、ちょっと俺の話を聞いてくれないか! こうしたらどうだろう……」
俺は、その秘策を皆に伝えた。
皆の表情は、一同驚きを隠せないでいた。
「タロー様、そんなことが本当に成功するのでしょうか……?」
「グリフ、これはやってみないと分からないが、俺は誰も殺したくないし、誰も傷つけたくはないんだ。分かって欲しい」
「そんなニヤ国、ヤーシブ国の全員を傷つけないなんて……」
グリフたちが驚いたのも、無理はない。
この作戦は、とても大掛かりなものだったからだ。
「グリフ、お願いがあるんだ。この方法を実行するためには、時間と労力が必要だ。それの手助けをしてくれないか」
「タロー様、でもヤーシブが攻めてくる前までに、その作戦を実行することが本当にできるのでしょうか?」
「だから、その時間を作るために、俺が一人でヤーシブへ行く」
「タロー様、お一人でですか……?」
「ああ、そうだ……。もう一度、俺が一人で交渉してみる」
「そんな危険なマネは許されません。せめて、私だけでも同行させてはもらえませんか?」
「いや、グリフの付き添いも不要だ。もし、ヤーシブで何かあった時、グリフ、君の命も失いたくはないんだ」
「タロー様……」
皆の顔は、驚きの余り強張っていた。
すると、側でその話を黙って聞いていたダガヤ王が、俺に近づき、肩をポンと叩く。
「タローよ。頼んだぞ。ワシはタローのこの作戦に賛成じゃ。ワシも誰も傷つけたくはない。もはや、この作戦しかなかろう。そうじゃないか? グリフ……」
「はい……。タロー様の身の危険はありますが、皆の命、この国を守るためには、私もこの方法しかないと思います……」
「よし、それじゃあ決まりじゃ。すぐに準備に取り掛かるのじゃ! この国の未来のために、国民総出で準備に取り掛かるのじゃ!!」
「(ハハーッ!!)」
俺の想いが、皆に通じた。
俺は、誰一人として、傷つけたくはないんだ……。
この作戦の全ての鍵は、この俺にかかっている。
この時、俺の中で、この国の王子としての何かが、芽生え始めていたんだ……。
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