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 どうしてこんなことに。  宿題のプリントにシャーペンを走らせる手を止めて、イスに深くもたれかかった。夜の静かな自分の部屋で背もたれがキシッと鳴る。  あれから毎日、本当に毎日のように、思考がそっちへ向かってしまう。こんなの普通じゃない。でも、いくら否定しても、この思考回路を消し去ることができない。  彼の不穏で真っ直ぐな目が頭から離れない。  胸に重苦しいものが湧いてきて、1つだけ残っていたパイナップル味のキャンディーを食べた。少し口の中で転がしたが、衝動的にガリッと嚙み砕いた。 「芦沢(あしざわ)登也(とうや)……」 『奴が憎いか?』  口から彼の名がこぼれた時、突如、脳裏に知らない男の声が響いた――。  
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