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「見た目二枚目、話すと三枚目? ひとことでいえばイケメン風味、かな」
「ひでっ!」
「あとね私、葉山くんの足の裏を眺めるために生まれてきた訳じゃないんだけど。それから、この靴下はもう駄目みたいね」
机の上に並んだ足の裏をシャーペンの先で突っつくと、当の本人は逃げるように足を引っ込め足裏を確認した。かかとのあたりは生地が擦り減り、地肌がすけて見えていた。
「そか、ついに殉死かよ俺のアディダス。散々苦労かけたからなぁ」
「サッカー部ならしょうがないよね、上達の犠牲だと思おうよ。目標のサッカー部のエースどころか、スタメンもまだ遠いんでしょ」
「まあな、先輩方はやっぱうめぇよ。ポジション争い厳しいぜ」
葉山くんはショートレイヤーの髪を無造作に掻いてみせる。多少手厳しいことを言っても後腐れがないから、『気さくな話し相手』としては最高だ。こういうのを男友達っていうのかな。
「でもさ、葉山くんは一学期、京本くんの隣の席だったし、よく話しかけていたじゃない? だから京本くんの喋らない事情を知ってるんじゃないかと思って」
葉山くんなら、何食わぬ顔で事情を聞きだしていてもおかしくはない。
「ああ、確かにあいつ、水曜日だけは人が変わったように無口になるよな」
葉山くんはうって変わって真剣な顔で答えた。普段からこんな表情でいれば、お望み通りそれなりにはモテるはずなのに、って思えなくもない。
「理由を知りたいんだったら、有紗が本人に直接聞いてみりゃいいじゃん」
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