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喧騒が聞こえる。
鈍い痛みが頭を叩いていた。苦痛に顔を歪ませながら目を開くと、そこに広がっていたのは沢山の木々が多い茂る森。
あの世は現世に近いものなのだなと男は思った。
「何をしている!早く逃げろ!」
声がした方を見ると、騎士らしき若い男が馬に乗り、男の方へと近づいて来ていた。
「!?」
意味がわからず、驚いて男は騎士から逃げるように走り出す。生物としての本能だった。追ってくるものからは逃げる。
「待て!」
逃げろと言いながらしかし、騎士は男に待てと言う。待てと言われて待つ人間はそんなにいないだろうなと男は思いながら走り続けた。が、馬より速く走れるわけでもなくあっさりと騎士に首根っこを掴まれる。
騎士は溜息をつきながら言った。
「お前、こんなところで何をしている」
「えっと…何もしてません…気がついたらここに居たというか…僕も何が何やらわからなくて…」
「わからない?」
騎士は片眉をあげた。馬からさっと降りて、男の正面に立つ。ひらりと舞った真紅のマントがかっこいいと見惚れた次の瞬間。
バンッ
と、思い切り男の背を叩く。
声にならない声でうずくまる男。
騎士はシュッと音をたてて剣を鞘から抜くと、男の首もとに突きつけた。そして、ザッという不気味な音とともに、男の喉もとを掻き切った。
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