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男ははっとして身を起こし、騎士を見下ろす。どうして、こいつが知っている。
「なんで知っている、って、思ったか?」
騎士もゆっくりと見を起こす。口もとは面白そうに歪んでいた。
認めるのも癪で、男は騎士から顔をそらす。けれど、彼にはお見通しで。
「だってオレは、お前とともに死んだからな。いや、殺されたと言ったほうが正しいか」
「…」
騎士は、空を見上げて呟いた。
「オレさー、幼少の頃、勉強も運動も、何も出来ない出来損ないだったんだ」
「…」
「けど、それが悔しくて。他人から馬鹿にされるのもだけど、何もできない自分が嫌で。そんなとき、敵国から敵が攻めてきて全面戦争になって。オレは、家柄もあって士官学校に通ってたのに、弱さのせいで何も守れなかった。オレを守ろうとして両親が死んで、思ったんだ。強くなりたいって」
「…」
「だから、必死に努力して、努力して、強くなった。昨日、敵国との戦いが終わって、オレは戦勝国の英雄だ。もう戦争なんて惨劇繰り返したくないから、そういうふうに世界を変えれたらって思ってる」
「…難しいんじゃないの、そんなの」
「そうかもな。でも、やってみないとわからないだろう?」
にっこりと、騎士は男に笑みを向ける。
「そしてそれを、お前が一番よく理解しているだろう」
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