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すると、
「夕人。」
「沙耶香!?」
後ろから少し震えたような声が聞こえたのでふりむこうとしたら、
「夕人、後ろを見ないでそのまま聞いて。」
ついに、頭が可笑しくなって幻聴でも聞こえたのかと思った。
でもこの声は確かに沙耶香だし、泣き顔を見られたくないと思うのも沙耶香らしい。
「夕人。あのね、私夕人に言いたいこといっぱいあるんだけど、時間がないから手短に言うね。あの日はごめんね。私ね、ずっと夕人のこと好きだったの。だから夕人が自慢してきたのについ、イライラしちゃって.........。」
鼻をすする音が聞こえる。俺ももう泣きそうになっていた。
「ねえ、夕人。私が死んだのは夕人のせいじゃないし、気にしないで。私、夕人の笑顔が好きだからずっと笑っていて。」
「じゃあ、お前も隣で笑ってろよ。俺、お前がいないとだめなんだよ。俺だって、お前が.........。」
「夕人。夕人なら大丈夫だよ。だからね、夕人。バカみたいに笑っててよ。大丈夫。頑張れ、頑張れ、夕人。」
背中がぽんっと前に押された。
「沙耶香!?」
後ろを見ても誰も居なくて、もう沙耶香の声もしなかった。
窓の外を見たら、もう日が沈んでいた。
俺はその日、沙耶香が死んで初めて泣いた。
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