たそがれさん

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 数時間後、僕は黄昏さん、ことマユミさんが住み込みで働いているという洋風の豪邸の一室にいた。お礼がしたいと言われたのでのこのこついてきてしまったのだけれど、まさかこんなことになるとは思わなくて、気持ちも頭も追いつかない。マユミさんにあてがわれていた一室は、「一番粗末で小さい部屋」らしいが6畳はゆうにあって、ベッドと作り付けのクローゼット以外何もなかった。シーツやクッション、ラグなどはあるけれど、まるでモデルハウスみたいなよそよそしさがある。マユミさんは階下のキッチンから紅茶を持ってきてくれたが、それはただ最低限の様式美といった体だった。カーテンが燃えるように光って、僕たちの横たわるベッドの上半分を照らした。僕は訳も分からないままに脱がされ跨られ、絶え間ない快楽のうちに果てていた。  あまりにされるがままだったのが悔しかった。僕よりいくらか年上らしいけれど、店での凛としたたたずまいからは、こんな風なことをする人だとはとても思えない。「いつもこんなことしてるんですか、若い男を連れ込んで」と訊いてみたかったけれど、そんなことを言ったら店に来てくれなくなるだろう。僕はまだ店で彼女に会いたかったし、あわよくばまたこうなりたいと思ってもいるらしかった。自分のアパートに戻って、僕は頭の中で夜じゅうマユミさんをめちゃめちゃに汚した。
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