夕焼けの思い出

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 このご時世、家にいる事も多くなった。  子供はすでに家を出てしまっているから、つまりは夫婦二人きりで家にいるという状態だ。  結婚して十五年。  高校時代に付き合いだしてそのままだから、付き合い自体はもっと長い。  そろそろと会話も減りつつある今日この頃。時折、家にいる事が息苦しく感じる事もある。  紗耶香に対して申し訳ないという感情が沸き起こってくるのだ。  彼女の道を早々に決めさせたのは僕だ。  こんなつまらない状況を作り出しているのは、当然僕の努力不足的な物もあるはずで。  だからどうにも申し訳ない。  申し訳なく思いつつも、特に何も出来ない自分が歯がゆいし、それもまた申し訳ないし。  仕事に出る、というのはその感情を誤魔化すのにちょうどいい。  早く世間が元に戻り、また会社へ普通に出られる日が来てほしいと思う。  多分、紗耶香もそう思っているのではないだろうか。
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