黄昏異能都市

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 帰宅してシャワーを浴びる。冷たい水を頭から被って思い返すのは今日のこと。 「やっぱこの街やばい。あのレベルが大っぴらに街中に居るとか。何か山の麓に怪獣居たし」  世の中には異能が存在する。あの赤鬼もそうだし、外見からは分からない奴だって多い。経験上、見た目が変わらない方が厄介だ。ヤバさが測れない。  なんで異能が生まれたのかは知らないが、あるという事実が問題だ。  とんでもパワーで好き放題やられたら世の中は大騒ぎ。映画や漫画だってモブは大変な苦労を強いられる。名前は国によって呼び方が違うけど、日本では単純に異能。カッコいい系のとか候補はあったけど、ぶっちゃけ流行らなかった。  とはいえ異能は万能じゃない。能力は個人依存で、耳くそがきれいに取れるだけ、なんてのもある。それ異能じゃなくて技術じゃないのか、と思うけど。  何よりも、異能は黄昏時限定のものだ。日が沈めば超常タイムはお終い。あんまり調子こいていると後で痛い目に会う。異能者が関わった事件について見ると、被害者が異能者で加害者が異能を持たない人というケースが多いことに気づく。理由は様々でどっちが悪いと一言でまとめられないが。  そんな訳で一緒にしておくと碌な事がないんで、異能者を受け入れる街ってのが出来た。  それがこの朱音市。私の左遷先。  希望する異能者を受け入れることに積極的な街。能力の登録など面倒なこともあるが、能力に準じた管理をされて過度な束縛を受けないのが魅力。あの鬼や怪獣は明らかに外じゃ生きづらい。それを保護する--だけの優しい世界じゃないのだろうが、それでもこの街に価値はある。 「怪我をさせられたら罰金、だもんなあ。生身でよく耐えたわ」
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