黄昏異能都市

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 午前中にメールや転属手続き周りの書類を処理して、午後は割り振られたトラブル対応に街へ出た。最早、異能関係ない住民トラブル対応だったが、それはそれで無理ない仕事で助かるというもの。  報告は置いておいて、定時までぶらぶらと街を歩くと朱音川の近くまで来ていた。自動車の修理工場が目について視線を投げてみると、タイマン小僧の木崎くんが働いていた。 「勤務地近くだから、あの河川敷に場所もらってるのか」  見つかって昨日のこと蒸し返されても嫌なのでさっさと通り過ぎる。と、携帯が鳴った。 「どうしました、係長?」 『今どこ?』 「朱音川の自動車工場でわかりますか?」 『大丈夫わか--何でそんな所に?』 「住民のトラブル解決に奔走してまして」 『本当に?』 「もちろん」  嘘も吐くなら堂々と。 『まあ、いいや。渡良瀬海斗っていう洗脳系の異能者わかるよね?』 「ええ、私が半殺しにした奴です」 『君、本当そういう所が--』 「異能者相手に手加減なんて出来ませんて。渡良瀬がどうしたんです?」 『さっき連絡があって、病院から抜け出した彼がこの街に入ってるみたいなんだよね』 「いつですか?」 『昨日の夕方』 「ザル警備。で、何で私に連絡が?」 『無茶しないように釘刺しておこうと思って』 「何かすると?」 『まだ信用無いんだよね、君。いいから、やむを得ない時は一回僕に連絡すること。いいね?』 「わかりました。見かけても放っておきます」 『目撃したなら一報くらい欲しいな。数で押せば取り押さえるのは簡単な相手だしね』 「一人しか操れないですからね。もうすぐ定時なので今日は大人しく帰ります。渡良瀬と会うこともないですよ」
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