日が暮れる前に

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「それにしても、高橋先生が校長先生とはね」 「私が入学した時は、まだ新任の先生だったのにね」 「俺たちも歳をとるわけだ」 「でもおかげでお母さんの願いを聞いてあげることができたわ」 「入院する前に、母校の中学校見に行きたいって言われた時は、絶対無理だと思ったけどな」 「このご時世、普通は無理よね」 「融通を利かせてくれた高橋先生には感謝しないとな」 「そうね。でもテスト期間中じゃなかったら、さすがの高橋先生でもこんなことは許してくれなかったんじゃないかしら。普段だったらこの時間、まだ部活をやってる生徒達が残ってるわけでしょ。そんな中、一応卒業生とはいえ、見ず知らずのおばあちゃんをうろつかせるわけにはいかないもの」 「まあそうだな。ただ残ってる生徒なら、まだいるだろ?」 「そうなの?」 「だってさっき学ランの子とすれ違ったじゃないか」 「何それ? そんな子いたっけ?」 「ほら、母さんを教室に案内したすぐ後に」 「気づかなかったわ。それに 私たちの頃にはもうブレザーだったじゃない。お母さんとお父さんが通ってた頃は、学ランだったみたいだけど」 「そうか……いや、でもさっき確かに見たんだけどなぁ」 「お父さんの幽霊だったりして」 「なんだよ、それ。やめてくれよ」 「冗談よ。さて、そろそろお母さんを迎えに行きましょ。帰ったら入院の準備もしなきゃいけないし」 「ああ、そうだな」
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