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「凪ちゃん、知ってた? 先生、魔法が使えるのよ」
「まほう?」
「一日のうちで、一回だけね。ちょうど今くらいの時間かな。ほら」
夕方、太陽が沈んでから真っ暗になるまでのほんのちょっとの時間だけ、魔法が使えるの。
そんな話をしてくれたのは、保育園の先生だった。それもたった一度だけ。
今思えば、私を慰めるための軽い冗談だったんだろう。それはちょうど私の母が迎えに来てくれる時間で、その日は他の子供が残っていなかったから。
先生の顔はもう思い出せないけれど、魔法という言葉だけが不思議と心に残っている。
いつしか、日が落ちてから暗くなるまでの間、ぼんやりと空を眺めるのが癖になった。
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