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魔法って、どんなことができるんだろう。
それはもしかしたら。
「宝くじが当たったら何を買おうか」
とか考えるのに似ているかもしれない。
時には喧嘩した友達と仲直りできる魔法を望んだ。翌日は昨日の喧嘩などなかったかのように遊べたから、きっとあの魔法が効いたのだと信じた。
テストの前の日には、英単語が全部覚えておけるように願ってみる。けれど、どんなに頑張っても単語は頭から零れ落ちて、結局テストの出来はいつもと変わらない。やっぱり魔法なんて無いんだって、当たり前のように納得したりもした。
高校受験の前日は、綺麗な夕焼けが見れた。こんな日はきっと、魔法だってよく効くはず。
私の行きたい高校は、幼馴染の壱吾と同じ所だ。ほんの少し無理目だったけれど、どうしても受験したいと我を通した。だから夕焼けに向かっていつもよりもっと真剣に祈った。
もし本当に夕闇の魔法があるなら、私を壱吾と同じ高校に合格させて!
真っ暗になるまで外で空を眺めてたら、さすがに怒られたっけ。
魔法のおかげか、それとも偶然か。幸運にも私は希望の高校に合格して、また三年間壱吾と一緒の学校に通えることになった。
保育園の時は泣き虫だった壱吾。
小学生の時は私よりも小さくてかわいかった壱吾。
中学生になったとたんにぐんぐんと背が伸びて、いつの間にか私が壱吾を見上げるようになってしまった。
中学まで習っていたサッカー教室をやめて、高校では陸上部に入った壱吾。
もともと足は速かったし、あっという間にレギュラーになった。女子にもすごく人気があったから、自然と私は遠くから眺めてることが多くなる。
夕闇は、いつの間にか壱吾のことばかり考える時間になっていた。
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