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家に帰ってご飯を食べながらも、ついつい考えてしまう。
一体どうやって誘ったらいいんだろう。
「模試の成績悪かったの?」
お母さんが心配そうに言うので、慌てて鞄から成績表を出した。
「大丈夫、大丈夫。A判定だった」
「そう。最後まで油断しないで頑張ってね」
「分かってるって」
お母さんは私から成績表を受け取って、安心したみたいだ。
弟たちが無邪気に、姉ちゃんすげえ、姉ちゃんすげえと喜んでくれる。まだ小学生の弟と妹にとって歳の離れた姉は自慢らしい。そんなに大したことないのに、大げさに褒められてくすぐったくなる。
お母さんも笑った。
「それにしても、何をそんなにそわそわしてるんだか」
「あ、あのね」
どうしようかと悩んだけど、とりあえず花火大会に行く許可だけは貰っておかなければ!
今まで家族と行ったことはあったけど、一人で行ったことはない。
壱吾を誘えなかったら、一人花火かも……。
いやいや、そんな弱気でどうするの。
美咲ちゃんも今頃勉強を頑張ってるんだ。私もちゃんと壱吾を誘う。
「来週の花火大会、見に行ってもいいかな?」
「来週は、お母さんもお父さんもちょっと用事があるわねえ。家にお客さんが来るからお祭りには行けないのよ」
「ううん、その……一人で行こうかなって」
壱吾とっては言えなかった。
けどそれを聞いてお母さんがうーんと唸りだす。
「さすがに一人は危ないんじゃない?」
「でも、もう高校生だから」
「花火は暗くなってからだから」
大丈夫だと言い募ろうとしたら、お母さんが何か思いついたようにポンと手を叩いた。
「あ、そうだ。壱吾くんに護衛してもらえばいい」
「え」
「お母さん、山下さんに頼んであげるわ」
ちょ、待って、待って。
いや、それは私にとって好都合だけれども。
山下のおばちゃんは壱吾のお母さんで、うちのお母さんとすごく仲良しだ。どうしよう。このままお母さんに頼んだら、壱吾もお祭りに行ってくれそうな気がする。
頼んじゃうか。
でもそうすると何となく美咲との約束を反故にするような気がした。
だから。
「いいよ。えっと、自分で頼んでみる」
「あら」
お母さんはちょっとびっくりしたように目を見開いて、それから小さな声でふふふと笑った。
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