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それからして、ナイトは少しずつ思い出した。
公園で落ちて砂まみれになったパンを拾おうと手を伸ばした時、横から白い手が伸びてきてナイトの手に重ねられた。
「どうした少年」
明朗な声に振り返るとオレンジ色の丸いものが目に入った。さらに下を見ると、緑色のものがはためいている。
返事をしようとしたが、ここまで来るのに精一杯でもう何の力も残っていなかった。
唯一残っていた、パンを拾う力は先程、目の前の女に奪われた。
何か口にしようと、口を動かした時に、ひび割れた唇から血が流れた。
視界もぼやけ始める。
きっと、母親にぶたれたせいで意識が朦朧としているせいもある。
「お腹すいた」
やっと出せた声は、蚊の羽音よりも小さい。
「ならば私と来るがいい」
垢にまみれ、腐った卵のような匂いのする自分の体を、ひょいと黒い服を着た男が担ぎあげた。
ナイトはその冷たい体に、身を預ける。オレンジ色の頭をした女が振り返った。
「さぁ。行こう。ハロウィン城へ」
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