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ぼろぼろの壁に掛けられている振り子時計が五時を指した。ぼーん、ぼーん、と深みのある音を奏でて、店中に夕刻の到来を告げる。それを合図に、バックヤードからぞろぞろと店員達が姿を現し始めた。獣の耳を生やしている者、大きな翼を背負っている者、角の生えている者。どれも皆人間離れした容姿をしている。
鋭い牙と鋭い爪、蝙蝠のような翼を持った女性が僕の座る席に近付いて来た。
「やあやあ、いらっしゃい。今日も来てくれたんだね~」
店長である。見かけは二十代半ばから後半くらい。正直に言うとかわいい。美人というよりもかわいい。翼の感じもぼくの好みである。けれどそんな思春期の感情を彼女にぶつけるつもりは今のところない。敗北した時が辛いからだ。意気地なしめ。
僕は「いつもの」を注文する。
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