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昼と夜の境目、夕方。またの名を黄昏、そして逢魔が時。怪しい者達と会い見える可能性があるとされる不可思議な時間だ。店内には奇妙な格好の店員がうごうごと蠢いている。人数自体は店の広さにぴったりだと思われるのだが、翼やら尻尾やらが幅を取るため若干狭苦しそうに見えた。
「お待たせしました。トマトジュースです」
普通のコーヒーや軽食ももちろんある。しかし、この店の売りは店員達のおかしな格好に合わせたおかしなメニューである。例えば吸血鬼が求める血に見せかけたトマトジュースであったり、のっぺらぼうの顔をチョコレートソースで描くことのできるパンケーキであったり。どれも店の雰囲気にぴったりであり、店員を眺めながらそれらを味わうと自然と心が落ち着いた。
明日も学校だ。今日一日の疲れをここで癒して、元気をもらう。僕の日課だ。本当は早朝にも開いていてほしいのだけれど、僕以外の客がほとんど来ないだろうから無理は言えない。
「ここだよここ! ほら、夕方しか開いてない喫茶店!」
「わあ、本当にあるんだ」
「お気軽にどうぞ~。黄昏喫茶逢魔が館へようこそ~。夕暮れの素敵な時間をごゆっくりお過ごしくださいな」
「わあ! 本当にお化けがお店やってる!」
「すごーい、小道具凝ってるねー!」
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