逢魔が館で過ごす夕暮れの素敵な時間

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 傾いた日差しがオレンジ色の光を街に浴びせている。家路を急ぐ人々の足取りは速く、ぼんやりしていると人の波に飲まれてしまいそうである。駅から出て行く者、駅に入って行く者。その間を縫いながら僕は道へ転がり出た。文字通り転がってしまい手を少し擦りむいた気がするが、特に問題ないだろう。起き上がり、駅から離れて商店街を進んでいく。  店の窓ガラスやショーウインドウがオレンジ色に光っている。どこかで石焼き芋を売っている声が聞こえてくる。  風に舞う落葉を軽く目で追いながら、僕は歩き続けた。歩く。歩く。まだ歩いている。どんどん歩いて、歩いて。そうして、一軒の店に辿り着いた。  ドアの隙間からコーヒーの香りが漂っている。 『お気軽にどうぞ』 『黄昏喫茶(たそがれきっさ) 逢魔(おうま)(かん)』  仰々しい店名である。
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