昼のカートリッジ・夜のカートリッジ

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 人生は今日も楽しい。  愛しのミユキと二人、地中海を眺めて過ごす時間は最高だ。  太陽の陽射しが降り注ぐ海岸は白い砂がきらきらと輝いていて、だけども暑すぎることはなく快適そのものだ。  海沿いの開放的な街を散策するのに時間をかけすぎた僕たちが、このビーチまで辿り着いたのは遅がけの時刻だったが、日没の遅いアンダルシアでは昼間の太陽がまだ煌々と輝いている。  砂浜には古くなった小型漁船を改造したバーベキュー台が置かれていて、僕たちが注文したイワシの串焼きが炭火で炙られていた。  彫りの深い顔面を浅黒く日焼けさせた男が、小ぶりなイワシを何匹も縦に刺した串を、時おり砂に差し直しては火の通りを調節している。  近づいてそこだけを見てみると、まるで箱庭の中の焚き火を、外から現れた巨大な手が世話をしているみたいだ。  物珍しげに覗き込む僕に向かって男は、僕が首から下げたカメラを指さして何ごとかを話しかけてきた。異国情緒を楽しむために翻訳機能は切っているので、言葉の内容はわからない。  でも、人間どうしのコミュニケーションだから、大体のニュアンスは身振りや表情でわかるものだ。今はおそらく「写真撮ってもいいよ」と言っているのだろう。 「サクヤ、そのお兄さんも入れて撮ってあげるよ」  男が言っているであろう言葉に甘えて何枚かイワシの炭火焼きボートの写真を撮影していると、さっきまで波打ち際でサンダルの足元を海水に浸していたミユキがすぐ隣に立っていた。
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