昼のカートリッジ・夜のカートリッジ

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 人生は死ぬまでの暇つぶし――  そんな言葉を、昔の人たちは時おり名言のように引用してきては、一生懸命な人を揶揄したり、自分自身の気持ちを楽にしたりしていたらしい。  前に<大学>に通うカートリッジで、人類学を専攻したときに学んだことだ。  大学で講義を受けている最中は、カートリッジにプログラムされた「学びたい」という感情に支配されていて何も思わなかったが、直後に覚醒してみれば、なんと贅沢な話なんだと憤ったことを覚えている。  自分の体ひとつ自由にならない僕らの日常と比べれば、昔の人たちは死ぬまでの時間をただ待つ以外に、有意義なことをたくさんできたじゃないか。  いつか死ぬことは事実だが、それは単に締め切りが設けられているというだけだろう?  終わりがくるまでの間に成せる無数の可能性が、周りに転がっていたというのに。  時代が違えば価値観も異なるのだから、今の感覚で考えても仕方がないということはわかっているのだけれど。  昼と夜の間に考えることなんてそんなもんだ。
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