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「帰らなきゃ」
立ち上がった。パンパンと砂をはらった。波の中で何かが光った。
波は、小さなコルク瓶を置いて、海へ帰っていった。
十五センチくらいの透明な小瓶の中には、麻縄が丁寧に巻かれた、薄茶色の紙が入っていた。
家に持ち帰り、紙を取り出して見てみると、その真ん中に、丸くかわいらしい字で、ひとこと、
『届きましたか?』
とだけ、書かれていた。
僕は、引き出しからメモ帳を取り出した。学校へ通っていた頃の記憶が書かれているメモ帳だった。数学の課題とか、定期テストの範囲とか、授業中の落書きとか。前の席の奴の後ろ姿ばかり描いていた。まあまあ上手くかけている。でも、もう、いらない。
まだ白紙だったページを一枚ちぎって、そこに書きつけた。
『届いています。貴方は、誰ですか?』
麻縄がなかったので、適当に巻いて、そのまま、手紙の入っていた瓶に詰めた。
メモ帳は、屑籠に捨てた。
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