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彼女は、フード付きの、長い黒マントを羽織り、黒のブーツを履いていた。
マントの裾から伸びた脚は、白すぎる程に白く、細かった。
塔の前までやってくると、フードを被った彼女が、俯いたまま尋ねた。
「ほんとに、いいの」
「いいよ」
君となら、怖くないと思うんだ。
直径約五メートル、高さ約二十メートルの塔。
中に作られた螺旋階段は木の板で出来ていて、苔はもちろん、キノコまで生えている有様だ。ミシミシと音が鳴るし、がたついているし、ところどころ、崩れ落ちてすらいる。
階段の一番上まで来ると、屋根裏部屋の入口みたいな、押し上げて開けるタイプの扉が付いていて、ここを開けると、最上階に出られるようになっていた。
「君も、本当にいいの。死ぬんだよ」
「構わないわ」
扉はとても重かった。
少しだけ開けると、ヒューと風が吹き込んで、僕の頬を叩く。
バン。扉が開いた。
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