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昼と夜の狭間で
月が見たくて。死にたくて。
でも、生きていたくて。
今日も、夕暮れの海を眺めていた。
白い砂の上で、膝を抱えて。
周りには誰もいない。沈みかけの太陽だけが、僕を見つめ返す。振り返る勇気はまだなかった。波が打ち寄せ、去っていく音だけが聞こえる。日暮れの鐘も、とうに鳴り終えていた。
月という惑星は、それはそれは美しいものらしい。
暗がりに住む人々を優しく包み込む光を持っているという。
そして、その優しさは詩になる。時になる。愛になる。
そうして、受け継がれていく。
僕も、そんな美しい月を、見てみたかった。
僕たち、太陽の一族は、月の光を目にすると消えてしまう。その美しい惑星とやらをこの目で見ることは、生きている以上、決して出来ない。
日暮れは、太陽と月とが入れ替わる時間。今日が終わっていく時間。
そんな時間に、こうして太陽を見ていると、死に近づいている気がして、生の痛みが和らぐ。
太陽の支配する世界は、僕には眩しくて、痛い。
もう、太陽が沈む。気付くと、無関心な瞳は見えなくなって、橙色の額だけが、かろうじて覗いているだけになっていた。
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