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「持ち込めないものを見るので荷物を検査します」と言われ、それから荷物検査が始まる。看護師さん、三人がかりだ。まず化粧水がダメ。エタノールが入っているからと言われた。紐のついたパジャマもダメ。自殺防止であろう。ストッキング、履いてきた踵の高い靴、爪切り、何故か耳掻きも持ち込み禁止である。ほとんど主人が持って帰る事になった。
その後私が入院をする個室に案内された。普通の病院と変わらない普通の個室であった。奥に洗面所がついている。私は檻の中のような部屋を想像していたのでホッとした。それと同時に疲れがでてきた。アルコールのせいで肝機能が悪いので体も怠い。このままベットに横になりたいと思っていたら、すぐにお昼の時間になった。私のお昼も用意されていると事前に聞いていたので、談話室に主人と行く。三十人位居るだろうか?殆どの席が埋まっている。男女比は同じ位。想像より若い人が多い。二十代、三十代位の人が窓際の方にグループで固まっている。私は挨拶やら面倒な事が嫌なので、端の席の老人グループに混ざる事にした。
新入りが入って来たので珍しそうに、こちらを見る眼差しが数人から感じられる。私は気づかないふりをして、病院食のメニューを観察する。焼き魚、かぼちゃのサラダ、ホウレン草のおひたし。みかんの缶詰めがプラスチックの器に盛られている。私は食欲がなかったので、一口づつ味をみて食べるのをやめる事にした。味は悪くはなくて、病院食にしては美味しい方だった。主人が
「それだけしか食べないのか?」と心配そうに言う。
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