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――つまらないライトノベルのレーベルなんか持ってない……光源社のコンテストなら、きっと知的な作品を正しく大賞に選んでくれるはずだわ。暫くはここで頑張ろうっと。
私が新しく作品を投稿し始めたのは、光源社が持っている投稿SNSのハローノベリストだった。ここの新人賞の締め切りまで、あと二ヶ月。それまでに十万文字以上になるように連載中の長編を完結させなければいけない。
色々考えてはみたものの、やはり現実的な作品で勝負したいという欲求は押さえられなかった。自分なら異世界モノを書いても、下らないヘボ作者どもよりずっと良い作品を書ける自信はあるが――やはり、“異世界ファンタジーでなくても面白い!この作者は天才だ!”と運営側にも思わせてやりたいのだ。
そう、例えばゴミのような空想小説ばかり応募される中で――現実に則したノンフィクションに近い物語が受賞すれば。きっと一目を引くに違いないと考えたのである。自分が体験したことが元になっているのだから、リアリティは充分。同時に、あの忌々しい二人への憂さ晴らしもできる。まさに一石二鳥だ。
私は夫に暴力を振るわれた挙げ句、息子を奪われて捨てられる可哀想な女性の恋愛サスペンスを書き始めた。勿論、モデルが誰かなど言うまでもない。女性の名前は変えたが、夫と息子の名前はそのまま本名を使ってやることにした。あの二人を悪し様に描けば描くほど、自分の胸がすっきりすることを知っていたからだ。
――ふふふ、来てる来てる感想。そうよね、みんな早く可哀想なヒロインに報われてほしいわよね!
ドロドロ恋愛が好きな読者は少なくないらしい。私はヒロインに同情する読者のコメントを見て、にやりと口角を上げた。時々紛れ込む“文章が固くて読みづらい”“説明調ばかりで眠くなってしまった”のいうような荒らしコメントを丁寧に削除しながら。
私の読者には、私の作風を理解できる知的な人間だけ残ればいいのだ。ライトノベルのような馬鹿らしい作品を好むようなゴミどもは必要ないのである。
「ん?」
そんなコメントと感想のチェック作業を行いながら――私は眉を潜めた。
一つ。異質なコメントが混じっていることに気付いたからだ。そこにはたった一言、こう記されていた。
『なんで嘘をつくんですか』
――どういう意味よ、それ。わけわかんないんだけど。
否定的なコメントであるのは間違いない。私はそれをさくっと削除した。
批判もマイナスの意見も、完璧で素晴らしい私の作品には一切なくていいものなのだから。自分の頭が足らないのを作品のせいにするような読者など、こちらとしても願い下げなのである。
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