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かみさまおねがい!
ここは○○神社。
幸運の神様と知られる僕のところには、今日もいろんな人間達がお参りに来る。僕は朝も早い時間から、ずーっとお賽銭箱の前で待機している真っ最中だ。
僕の姿は人間には見えない。でも、お賽銭箱の前で待っていなくちゃいけない理由がどうしてもあるのである。何故かといえば。
「神様!お願いします!」
現れたのは、大学生くらいの若い男性。
「週に一日、一時間だけ働けばヨシ!時給二万円以上!交通費全額支給!残業ゼロで楽しく可愛い女の子とお喋りするだけでお金貰えるような楽で愉快なお仕事が見つかりますように!」
「あるかそんなもん!」
これだ。変なお願いする輩ばっかり訪れるのだ。
僕はそいつが投げ込んできたお賽銭を全力で弾いた。この神社は、お賽銭が入ると願いが叶うと勘違いしているやつが少なくない。そんな誤解されてはたまらないので、僕は毎回必死でお賽銭拒否に神通力を使う羽目になっているのである。
神様の力をそんなしょうもないことに使うなって?それはしょうもないお願いばっかりする奴らに言ってください。
「神様、お願いだ!」
次にやってきたのは、中学生くらいの少年。
「明日学校が爆発しますように!」
「いや、何でやねん!」
「給食で人参が出るんだよ、嫌だ!」
「お前は小学生かーっ!!」
野球部か何かなのか、無駄な剛速球で投げ込まれるお賽銭。僕はバッドで全力で打ち返した。何で都合よくバットがあるのかって?神様なんだからなんでもありなんです。
「神様、おねがーい!」
さらにやって来たのは女子高校生。
派手な見た目の彼女はまるで色仕掛けでもするかのようにくねくねしながら告げた。
「クラスの男子みんなが私に一目惚れして、逆ハーレム成立しますように!」
「そんなの夢小説でも読んでろよ……」
「あと、タクミ君に私の三十股がバレないようにしてくださーい!」
「既に三十八股!?やばくね!?」
残念ながら、僕の姿も見えなければ、ツッコミも相手に聞こえない。ばらばらばらーと大量に投げ込まれた一円玉を、僕は必死になって弾いた。一円玉が山ほど宙を舞って女子高生の全身に貼り付いていく様はシュール以外の何物でもなかったが。
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