いつもこの車両に乗る君へ

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 いつも同じ車両に乗って来る君へ。  僕はいつからか、君のことが好きになりました。仲良く友達と話している君。チラチラと見てごめんなさい。なるべく気分を悪くしないように気を付けていました。  たまに目が合うと暫く見てしまうのは、少しでも君を見ていたかったから、少しでも、僕という人間を認識して欲しかったからです。でもまぁ、恥ずかしくて先に視線は外してしまうのですが。  意識はしないようにしているのですが、君が友達と話している時にみせる笑顔が、見たくてたまらない時があります。やっぱり見てしまうのです。そのかわり上手く誤魔化すようにカバンの位置をずらす時、スマホを確認する時にチラッと見るようにしてました。  1人で電車に乗っている時は、よく目が合いましたね。その時は正直なところ嬉しくてドキドキが止まりませんでした。乾いた高校生活に潤いを与えてくれてありがとうございます。  この前、友達と2人で僕を見て話されていましたね。思わずそっちを見てしまいましたが、恥ずかしくて目線を下げてしまいました。  笑いながらな何かを話してこっちを見ている姿を見て僕は気が付きました。気持ち悪い奴だと思われていると。意図して変な目で見ているつもりはありません。嫌な思いをさせてしまったら謝ります。本当にごめんなさい。  それからは、なるべく君を見ないようにしました。 でも、同じ車両に乗ってることは僕にはささやかな楽しみでした。  君は共学なんですね、素敵な男の子や友達がいるのでしょう。青春してるんだなぁと羨ましく思いました。僕は男子校なので、こういう時しか女の子と会う機会が無いのです。  バレンタインの日、紙袋に入ったチョコレート。色んな人に配るんですね。その中には本命の人がいるのでしょうか。おそらく1番上に乗った大きな箱がそうなのでしょう。ピンク色のリボン。羨ましく思いました。  男子校ではバレンタインは歓迎されない日なのです。残酷な1日なのです。君の事が好きなのに、君は違う人が好きという事を再確認させられる日なのです。でも、好きな人と恋が結ばれると良いですね。  そう思っていました。  電車を降りる時、「良かったら、どうぞ」と言ってくれた君。まさかそのピンク色のリボンの箱をもらえるとは思ってはいませんでした。友達と笑っていましたね。 「ありがとう」と言って受け取りましたが、最初は僕の事を笑いのネタにしようとしているのではと思っていました。    手紙、読ませてもらいました。同じ気持ちでいてくれた事、とても嬉しかったです。僕が視線を逸らすようになったと、君が感じたのは、そういう理由だっからです。気持ち悪い奴と思われたく無かったのです。  手紙の中でどうしても譲れないことが一つあります。どうしてもこれは僕の方から言わせて欲しいのです。君の勇気を踏みにじる訳ではありません。その勇気を踏まえて。 「良かったら、僕と付き合ってもらえませんか?」  本当は僕の方から行くべきなのに勇気が無くてごめんなさい。勇気を出してくれて本当にありがとう。もし良ければ、この手紙を渡した次の日、朝10分ほど早目に来てもらっても良いですか。その時に改めて告白したいのです。 追伸、どこにも名前が載っていなかったので「君」とさせてもらいました。  
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