灯のあと

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 北岡は日中に仕入れてきた食材で、煮込みを作っていた。難しい料理は出来ないが、独りなら身体が温まってくれればそれでいい。『コジード』というポルトガル風の煮込みで、要はシチューの様なものだった。牛すね肉を入れるところだが鶏肉にして、重くならないようにした。  調理するのは苦では無かった。何かが出来上がって行く過程というのは常に新鮮で、いつも熱中してしまう。だから最初、ドアがノックされているのに気づきさえしなかった。建てつけの悪いドアがまた揺れているのだろうと思った。  立て続けに叩かれるドアのいくらか切実な響きを感じて、北岡は手を止めた。普段この山小屋を訪れるのは、出版社の編集と赤坂でバーを営んでいる水沢吾郎というバーテンダー位のものだ。北岡はタオルで手を拭くと、傍らに置いていたギネスをひと口飲み、ドアに向った。  鍵を解くと、ノックが止んだ。北岡は慎重にドアを開けた。
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