灯のあと

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 美香が立っていた。  不安に苛まれた子どもの様な表情で、ノックしていた手を宙に留めたまま、凍りついた様に立っていた。  背が高く、華奢で、髪が明るい栗色だがそれは染めたものなのか地毛なのか、暗がりが這いよっている黄昏時ではよく判らなかった。ぱっと見でも仕立の良いワンピースを着ていたが、襟もとが少しはだけられたような痕があり、不穏だった。  視線がぶつかっても北岡がそのままで居ると、美香が震えるか細い声で言った。 「助けてください」  断るべくも無く北岡は美香を室内に招じ入れ、薪ストーブの傍らのアンティークというには程度の良くない古びたソファに導いた。この時期に薄手のワンピースだけでこんな場所を歩いているのはただ事ではない。何にせよ、身体を温めてやる必要があった。  肩を抱くようにしてソファに身体を沈めた美香を横目に、北岡は上階に行き毛布を一枚、持ってきた。
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