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美香は近づいてくる北岡を少しおどおどとした窺う様な眼で見ていた。北岡が毛布を差し出すと、美香の顔に安堵が浮かびすぐに消えた。
「今、食事を作ってる。少しかかるから、そこで休むといい。どこかに連絡しようか?」
美香は首を横に振り、俯いた。何かを振り払う様な素振りにも見えた。
「酒は飲めるか」
北岡はふと思いついて、美香に訊いた。
美香は顔を上げたが、返事は無かった。
キッチンの端の小さな冷蔵庫で冷やしている『アブソルート』というスウェーデン製のウォッカを、北岡はショットグラスと共に持って来て、テーブルに置いた。
「きついが、温まる。飲めるならね」
向かいに腰を下ろし、ボトルを開けてグラスになみなみと注いだ。美香はとろみを持った透明な液体に満たされていくグラスをぼんやりと見つめていた。
「料理に戻る。何かあったら呼んでくれ」
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