灯のあと

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 北岡が食べ終わった頃、まだ美香はパンを頬張っていた。ワインも少しだが口をつけている。頬の上の辺りに、薄く朱がさしていた。美しい娘だった。何人かの女と関係を持ってきたが、大抵は北岡の仕事のやり方やつき合い方に愛想を尽かして別れを切り出されてきた。それはそれで、北岡にとって都合が良い場合もあった。いつかは終わるのが男女の仲だと、北岡は考えていた。だがこの娘が、そのような男女のもつれに翻弄されているのかどうかは判らなかった。それでよかった。 「訊かないんですね」  ワインをひと口飲み、美香が言った。 「君は助けてくれ、と言った。俺は助けた。それだけさ。女を助けるのに理由が必要なほど、若くないんでね。俺はこれから仕事をする。上に居るから、何か用があったら声をかけてくれ」
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