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北岡修一が山小屋に籠るようになったのは、十年ほど前の事だった。都心にある自宅の書斎では気持ちが乗らない時は、編集者に予め伝えて山に籠る。そうして、書く事以外に極力何も考えない生活をするようにしていた。
山小屋は中古で、古びたログハウス風の小さなものだった。築年数も古く、建てつけもどこかガタが来ているのか、すきま風が吹く。それも自分らしいと、北岡は思っていた。
冬が早いこの辺りでは、秋の中頃に入ると空気も冷え、執筆に集中できる。時折、町に食料品を買い出しに出るだけで、あとは日中は薪ストーブ用の薪を廃材から作ったり、近くの沢まで出て釣りをする事もあった。
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