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「なんだ亮、その子は?」
「俺の知り合い、もう友達だ。学校見学に来てたから連れてきた。田植え手伝ってくれるって」
稲の入ったパレットを運んでいた人が俺を見た。
「そりゃ助かるよ、俺んち昨日も田植えだったんだ、もう飽きた」
「歩んちの田んぼは広いもんな」
この人の家は農家なんだ、やっぱりこの学校はそういう家の生徒が多いんだな。
「名前は?俺は田代 歩だ、よろしくな」
「出雲拓海です。よろしくお願いします」
「よし、拓海!これ持って一緒に行こう。田植えは初めてか?」
「はい!」
「そうか色々教えてやる」
差し出された稲のパレットを手にする。田代さんがもう一枚を持った。
「おい歩、拓海くんは俺の友達だぞ。勝手に取るなよ」
「知らね、花卉農家は黙ってろ。俺ん家は専業稲作農家だぞ、超正確にしっかりと田植えを教えたるわ。稲作農家の誇りに掛けて」
「どんな自慢だ。じっちゃんの誇りに掛けてみたいに」
亮さんもパレットを持って追いかけて来る。掛け合い漫才のような二人のやり取りだ。
ふと振り返ると、俺の学生服を持った隆成おじさんがゆっくりと追いかけて来ている。
その顔がとても嬉しそうに笑っているように見えた。
福島県いわき市の田植えは本当にゴールデンウィーク頃がピークです。農家の知り合いは、ゴールデンウィークに遊んだ記憶は一切無いそうです😅
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