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隆成達が帰る時には、残ったご馳走を綺麗にタッパーに詰め直して秋風達と分けた。
みんなで片付けるとあっという間ね。
「お父ちゃんおばあちゃん、お休みなさい」
「お休みなさい」
美音と拓海が階段を昇って行く。
二人とも今日はお疲れ様、色々疲れただろうけどそれでも楽しかったかしら。今の二人の笑顔がとても嬉しいわ。
「母さん、色々ありがとう。俺はいつまでも母さんに甘えてばかりだ」
「櫂?」
「俺がこんなに子供達を引き取れたのも母さん達のおかげだよ。洸と二人だけだったらきっと大変だった。凪紗や真也まで引き取れたかどうか」
ああ、その事。
大丈夫よ櫂、子供が信念を持って挑んでる大事なお仕事を手伝える親は幸せなのよ。
「本当にいつまでも楽に過ごさせてあげられなくてごめん。こんなんじゃ、いつ母さんの自慢の息子になれるやら」
「あら、何言ってるの」
「え?」
「あなたも洸も最初から私の自慢の息子と娘よ。私とアルはこんな素晴らしい我が子と、大勢の可愛い孫達に囲まれて十分楽しい毎日を送っているわ。私は世界で一番幸せな母親よ」
「母さん」
そうよ櫂。昔、親友の莉緒菜に自慢した通り、私は世界で一番幸せな母親なのよ。
「ほら、櫂ももうお休みなさい。明日は緒方さんの所に行くんだから。先に莉緒菜の所にも寄るわよ」
「師匠の所…」
あらあら、露骨に嫌そうね。まぁ未だに合気道で勝ち越しの無いお師匠様の所だもんね。
「はい、お休みなさい」
櫂の背を押して階段に上げた。もう戸締りを確認して私もお部屋に戻ろう。
しばらくして三階の部屋に着くと、客間となっている櫂の部屋の灯りが消えていた。珍しくもう寝たのね。
自分の部屋に入り、立派に額装された洸の『残された憧憬』をじっと見つめた。
私の最愛の家族のその始まり。
愛しい娘と息子の幼い頃の愛らしい姿。
ねぇ櫂、母さんは本当に幸せなのよ。
あなたと洸の母親になったあの時から、ずっとずっと幸せが続いている素敵な人生なのよ。
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