後日談① ー洸ー

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「母ちゃん、これ」  夕食の時間になって、二階から降りて来た拓海からエアメイルの封筒が渡される。さっきの昂輝からの手紙だ。 「ありがとうね」  あとでお母ちゃんと一緒に見せてもらおう。  とりあえず今いる子供達と夕食だ。拓海と美音と凪紗と真也、みんなで席に着いていただきます。  食事をしながらみんなで色々話す。  今日はアルおじいちゃんはいつものアメリカ出張、櫂お父ちゃんはまだまだ帰宅時間じゃない。 「母ちゃん、今日の美術の時間に美音の絵が褒められてたよ。ナントカってコンクールに出品するから親に伝えてって先生に言われた」 「本当に!?」  拓海の言葉に私のテンションが急上昇だ。美音が嬉しそうに笑って頷いた。ナントカってなんなのか気にはなるが。 「そうなんだ!お父ちゃんにもちゃんと伝えておくね」  櫂もきっとすごく喜んじゃうね。幼い頃に美音が絵が好きだって言ったら、速攻美音くらい大きなスケッチブック買ってきた位の親バカだから。 「お母ちゃんおばあちゃん!凪紗も家庭科で褒められたよ」 「おや、凪紗は何を作ったの?」 「この前、おばあちゃんに習ったゾウキン!縫い目がキレイだって先生に褒められた!」  ゾウキン…まだ小学生だもんね。それでも偉い! 「そうなのね、偉いわ凪紗。今度は刺繍とか教えようかな」 「うん、おばあちゃん!」  お母ちゃんも嬉しそう。お母ちゃんは自分で洋服を作れるくらいお裁縫とか上手なのに、私ってそういう事にまるで興味が無かったから。  拓海も真也もこういう時は静か。別に機嫌が悪い訳じゃ無いから良いけど。 「ただいまぁ」  玄関の引き戸が開いた、この声は長女の夏那だ。今日はピアノ教室だからちょっと遅かったわ。  入って来た夏那と廊下で出会う。 「お帰り夏那」 「ただいまお母ちゃん、お腹空いたぁ」 「着替えておいで、すぐ用意するわよ」 「はぁい」  二階に行く夏那を見送った。  夏那はもうすぐ高校卒業だ。来春には今通っている音大付属高校の音楽科(ピアノ科)から大学部への推薦入学が決まっている。  あの頃、いつも傍に昂輝がいないと落ち着かなくて不安気だった小さな夏那はもういない。  ピアノという素敵な武器を手にした夏那は、今はいつだって自信に満ち溢れている。 「カナ姉、お帰り」    急いで着替えて食堂に降りて来た夏那と拓海が入口ですれ違う。 「ただいま、拓海はお風呂?」 「うん、真也が食べ終わったから。ちょっと休憩してから連れていく」  今日も拓海は真也の入浴係だ。真也はちょっと発達障害があって、一人では危なくてお風呂に入れられない。  以前、その面倒はずっと昂輝が見ていたけど今は拓海がやっている。誰に言われた訳でもなく、昂輝がアメリカに行ってからはずっと拓海の仕事だ。  毎日は大変だからたまには私が代わろうかと言っても拓海は譲らない。自分が昂輝に託された仕事だと言うのだ。 「カナお姉ちゃん、あとで三人でお風呂に行こう」 「うん、拓海たちのあとね」  凪紗の言葉に頷く夏那と美音。仲良し姉妹達は今日も一緒だ。
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