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診察が終わった後、美音と二人で画材を扱っている梅田の大きなお店まで歩く。
仕事で使う足らない画材を補充する為だ。それと美音に新しい絵の具を買ってあげようかと。
昨日見たら残り少ない水彩絵の具が多かった。お小遣いでちょっとずつ買い足してはいるようだが、あれでは思うような絵が描けず美音が可哀想だ。
いつも遠慮がちで欲しいものをなかなか言い出せない美音だ。もっと気をつけてあげないと。
「美音、セットが良い?それとも好きな色をバラバラに買って行く?」
売り場で美音に聞くと、美音はバラ売りの方が良いと言う。必要な色を選ばせ買い物カゴに入れる。
「余分に買って良いのよ、好きな色ってすぐ無くなっちゃうでしょ?」
頷いて美音が選ぶ色は、赤やオレンジなどの暖色系と爽やかな緑系が多い。これも美音の心の変化が分かる物だ。
もっと子供の頃は灰色や黒などのモノトーンの絵が多かった。美音は長い時間を掛けて、自分で明るい色の絵が描けるようになったのだ。
「お母ちゃんは美音の絵が大好きよ、美音の描く風景っていつも気持ちが優しくなるわ」
ちょっと照れて、でも嬉しそうに美音が頷く。
私はどの子供達にも同じようにお絵描きを教えたけれど、大きくなっても絵を描き続けているのは美音だけだった。
楽しそうに絵を描く美音を見れるのがとても嬉しい。
一緒に凪紗と真也にもクーピーペンシル12色のセットを買う。小さい子達はこっちの方が扱い易くて喜ぶ。
「今日もこのあと美波おばちゃんに会いに行こう。そこでお父ちゃんが迎えに来るのを待とうね」
美音が頷いて、二人で手を繋いで梅田の地下街を歩いていく。
いつも病院に来たあとは、ハルの自宅マンションに寄っていく。そこで櫂がお仕事帰りに迎えに来てくれるのを待つのだ。
私も車は運転するけど、梅田みたいな繁華街は得意じゃない。何より櫂が運転させてくれない。
まだまだ櫂セコムは健在だ。
「みんなのお土産に堂島ロールを買って行こうね」
阪急のデパ地下にある有名なケーキを思い出す。
美音が嬉しそうに頷いた。
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