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「うぃーっす」
イチョウ散る公園のベンチに、コーラのペットボトルを二本ぶら下げたミツオがダラダラした足取りで戻ってくると、友人のマサハルが何やら難しい顔をして座っていた。
その手には白い封筒のようなものが一枚。ミツオがジュースじゃんけんで負けてこのベンチを離れる前までにはなかったものだ。
「何それ、どしたん」
「ラブレター」
「ああ、見りゃ分かるよ。封のところにハートついてるもん。って、えええええ! ええええええ〜〜⁉︎」
ミツオは大げさに驚き、両手のコーラをブルブルと震わせた。
「お前の驚くタイミングやべえよ。びっくりするからやめろよ」
「いや、お前が驚かせるからだろ! 誰にもらったんだよ!」
ミツオとマサハルは幼なじみだ。
小学生の頃からお互いのことはよく知っている。
活発で坊主頭のミツオと、いつもローテンションなロン毛のマサハルは、見た目や性格は違えど妙に気が合い、放課後にはなんとなく一緒に帰ってしまうような親しい間柄だった。
高校に入ってからも腐れ縁が続き、たまにこうして暇つぶしにランドセルじゃんけんならぬ通学カバンじゃんけんをしながら帰っている。今日はミツオがたまたま園芸部の友人からもらったサツマイモのせいでカバンが半端なく重かったので、ミツオから「じゃんけんしようぜ〜」と言って誘った。
いつも最初にチョキを出す癖があるマサハルにミツオが容赦無く連勝すると、二人分のカバンを担いだマサハルは「くそ重いんだけど、なにこれ⁉︎」と文句を垂れ、「ちょっとそこのベンチで休ませろ!」と黄色く色づいたイチョウ並木の広場を指差した。
カラフルなすべり台とブランコ、ジャングルジムなどの遊具が置いてある憩いの広場だ。大人数でサッカーや野球はできない広さだが、ラジコンカーを走り回らせて追いかけっこするくらいは十分にできる。
喉が渇いたというマサハルに、さすがにジュースじゃんけんでも勝つのは気が引けたので、ミツオはわざと負けてやり、広場の外にある自販機へジュースを買いに行った。
その後の事件である。
ミツオがいない間に、マサハルにラブレターを渡した女子が現れたらしいのだ。
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